『ここはオアシス ココルーム』多田雄一

吾輩の行きつけの店は、三、四軒程有るが、真先に足が向くといふか、魂が勝手に吾が身から抜け入り込む不思議な空間が商店街の一角にある。

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ココはドコ?? ここは『ココルーム』なる喫茶店と申す。店内で交わされるお話が、“下世話”なもの、“ありきたりの世間話”さらに“超知性的”なもの。この狭い空間で互いに絡むこともなく火花を散らしている。

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酔っ払いのオッチャンがスナックと勘違いして入ってくる。だってさスタッフの皆さんべっぴんだらけ。

おもいつめた眼差しで道路からスーッと入ってきて無言でふたを開け鍵盤を叩くオッチャン。

インターネットで知りましたとキョロキョロと不安気に入ってくる若者達。

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オーイ、これ差し入れだよと紙袋がはちきれんばかりのお菓子。

野菜、お花をソファーやカウンターに置いてゆくオッチャン。

店内はゴタゴタの展示物(絵、書、書籍)。スタッフのほとんどはパソコンとにらめっこでキーを打つ指先がせわしない。それでもお客は平気で話しかける。その都度一瞬指先が止まりニコット笑って応対してくれる(お疲れさま💛)。スタッフの皆さん、優しく気儘なオッチャン達をかまってくれる。

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午前中から夕方にかけてのイベントやワークショップに参加しての帰り、真先に足が向く。丸椅子に座るとホットする。

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“おおい、オッサン、これナンボ?”おいおいワテここの従業員と違ふで、スタッフの方どこいったの。トイレかな。まぁいいか常連客だから応対しとこ“それな500円やで”“200円に負けとけや”“ほな300円にしとこ”セーター1着お買いあげ。これも日常茶飯事。

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まぁ兎にも角にもコーヒー1杯(お茶はタダ)で2、3時間粘ってみて!! おもろいオッチャンが入れかわり立ちかわり入ってきては、お芝居を演じてくれるよ。

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メニューはコーヒー、ジュース、アルコール、カレーライス。種々の酒肴。まかない。まあ、おいしいよ。さて、そろそろお酒でも呑もう。ココルームで。

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アートと釜ヶ崎。もっとも遠いものを、見立ての力で互いに借景してみたら、高齢化と貧困で衰えている・荒れていると思われていた地域から、いろんな活動力が飛び出してきた。

 

ココルームの魔法の源を、代表の上田假奈代さんに訊ねてみた。

「出会いと、出会いなおしと、ほがらかにさまざまな人たちが出会う場です。時にはうまく表せなくてトラブルも起こりますが、ほがらかに毅然と」

出会いには、不安がついてくる。表すことには、表せないことがついてくる。アートを成り立たせる穏やかならざる力に、場所をあけると世界が表れてくる。力まない、たゆまない、重くしない、出会いのアートが「ほがらかに毅然と」の言葉に表れているのだろう。

街で聞くココルーム移転のうわさ。ほんとですか、假奈代さん。

「4月から始める。アートNPOであるため、制度や補助金もなく活動の継続が難しいのです。変わり目を迎える釜ヶ崎で、ゲストハウスとカフェを運用し、地域の人々の仕事と出会いの場を作ろうと思っています」

移転先は、今の場所よりもう少し動物園前商店街を南に下ったところ。コミュニティビジネスを試みてますます釜ヶ崎に地下茎を広げていくココルーム。今後も目を離せない。

案内|多田雄一

文|松本裕文

 

こえとことばとこころの部屋(ココルーム)


住所|〒556-0001 大阪市西成区山王1-15-11
電話|06-6636-1612
E-mail|info@cocoroom.org
HP|http://www.cocoroom.org/
営業|10:00-19:00(日曜日は休みが多いので、HPで確認を!)